深井翠とピンクマン、ファンタグレープとの死闘、そして物価高
路地裏の薄暗い電灯の下、深井翠(ふかい みどり)は巨大な剣を握りしめ、深いため息をついた。「ひ〜…本気ださなきゃかー」
彼女の相手は、なんと自動販売機。それも、なぜか凶悪な眼光でこちらを睨みつけている、ファンタグレープ専用の自販機だ。
「なんで私がこんな目に…」翠はぶつぶつと呟きながら、自販機から発射される無数のファンタグレープのペットボトルを、ジャスト回避していく。
「ジャスト回避!からの、鉄板斬り!!」
翠の叫びと共に、鉄板製の剣が空を切り裂く。しかし、自販機は無傷。「チッ、硬い!」
「おいおい、いくらなんでも自販機に『硬い』はないだろ」突如、背後から声がした。
振り返ると、そこには全身ピンクタイツに身を包んだ謎の男が立っていた。「君は…?」
「僕はこの街を守るヒーロー、ピンクマンだ!そして、君の戦いぶりを見て、一つアドバイスを授けよう!」
ピンクマンは胸を張り、自信満々に宣言した。「自販機の弱点は、お金を入れるところだ!」
「…え?お金…?」翠は呆気にとられた。
「そう!お金を入れると、自販機は喜しくなって、攻撃を止めるんだ」
半信半疑ながらも、翠は100円玉を自販機に投入した。すると、自販機はゴトゴトと音を立て、ファンタグレープを一本取り出した。そして、攻撃が止まった。
「…なんだ、それだけのことだったのか」翠は肩を落とした。
「さすがはピンクマン!的確なアドバイスのおかげで助かったよ!」
「当然だ!僕はこの街を守るヒーロー、ピンクマンだからね!」
ピンクマンは得意げにポーズを決める。しかし、その直後、自販機が再び動き出した。
「な、なんで!?」
「どうやら、僕のアドバイスは間違っていたようだ…」ピンクマンは慌てふためき、その隙に自販機は先ほど取り出したファンタグレープを彼の顔面に直撃させた。
路地裏には、ファンタグレープの甘い香りが漂っていた。
自販機「物価上がってんだ。100円じゃ、足りねーよ」
おしまい