伝説のドラマー、モッチの奇行!トイレ詰まりで一体化!?

薄暗いライブハウス。ステージに置かれたドラムセットが、静かにその存在感を主張していた。場内は熱気と期待感で満たされ、照明が暗転すると、轟音が響き渡った。

「オーイ!元気かー!?」

ステージ中央に立ったのは、いかつい風貌の男、”ゴリラ”こと剛田。彼は、バンド「MONOEYES」のボーカルであり、その圧倒的な存在感でオーディエンスを魅了していた。

 

「今日は、みんなと最高の夜にしたいから、最後までついてきてくれよ!」

剛田の煽りに、客席からは興奮の歓声が沸き起こる。ライブは佳境に入り、剛田はギターソロで観客を熱狂の渦に巻き込んだ。

しかし、その熱気とは裏腹に、ステージ脇に置かれたドラムセットは静かだった。ドラムを担当するはずだった”モッチ”こと望月が、姿を見せないのだ。

 

「モッチ、どこ行ったんだ?」ライブ中盤、剛田が戸惑いながら呟く。

「あれ?モッチ、いない?」ベースの”ケンちゃん”こと健太郎も、首を傾げる。

「まさか、ドラムの練習中に、ドラムセットと一体化しちゃったんじゃないか?」

剛田が冗談を飛ばすと、客席から笑い声が起こった。

「一体化って、どういうことだよ!」

ケンちゃんは呆れた表情を見せる。

 

「いや、あのさ、モッチって、たまにドラムセットに魂を吸い取られることがあるんだって。昔、ドラムセットに憑依されて、一週間、ドラムだけ叩き続けてたことがあるらしいよ」

剛田は、いつものように大げさな話で場を盛り上げる。

「マジかよ、怖いなぁ」

ケンちゃんは、半信半疑ながらも、モッチの奇行を思い出し、背筋がゾッとした。

そして、ライブはクライマックスを迎えた。

「ラスト、盛り上がって行こうぜ!」

剛田の声が響き渡ると、客席からは再び歓声が沸き起こる。

しかし、ドラムセットは静まり返っていた。「モッチ、早く来いよ!」

剛田は、焦燥感に駆られながら、ステージを走り回る。

 

その時、ステージの陰から、モッチがゆっくりと現れた。

「すいません、ちょっと遅れました。あの…トイレが詰まってて…」

モッチは、申し訳なさそうに頭を掻きながら、ドラムセットの前に立った。

「トイレが詰まって、一体化しちゃったんだよ、おれ霊感強いから」

 

剛田は、安堵と同時に、モッチの言動に呆れ顔を見せる。

「一体化って、どういうことだよ!」ケンちゃんはすかさずツッコミを入れる。

ライブハウスは、モッチの奇妙な話と、MONOEYESの熱い演奏で、再び熱気に包まれた。

おしまい