自由帝国党の大臣、AI搭載型ブロックマシーンでSNSを制す

自由帝国党総裁選への出馬表明会見場。熱気と緊張が渦巻く中、一人の男が壇上に立っていた。海野太郎、デジタル大臣にして「ブロック界の大臣」でもある。その顔には、自信とどこか不敵な笑みが浮かんでいた。

「えー、先ほどですね、私のSNSでのブロック多用についてご質問がありましたが、これはですね、」海野大臣は少し間を置き、聴衆の視線を集めると、おもむろにポケットから謎の装置を取り出した。

「こちら、最新のAI搭載型ブロックマシーン『ブロッくん』でございます!」

 

会場がざわめく。ブロッくんは、手のひらサイズの球体で、表面には無数の小さな手がびっしりと生えていた。その姿はまるで、無数の「いいね」を求めて彷徨う魂の集合体のようだった。

「このブロッくん、誹謗中傷を自動検知し、瞬時にブロックしてくれるんです! しかも、ブロックされた相手には、ブロッくんから『あなたのコメントは、愛と勇気に満ち溢れていませんでした』というメッセージが自動送信されるという優れもの!」

記者の一人が恐る恐る手を挙げた。「あの、大臣、その…愛と勇気って、ちょっと基準が曖昧じゃないですか?」

 

「曖昧? 何を言っているんですか! 愛と勇気は、このブロッくんが判定するんです! ブロッくんは、私の心の声を代弁してくれる、いわば私の分身のような存在なんですよ!」

海野大臣はブロッくんを愛おしそうに撫でた。その様子は、まるで我が子を見る親のようだった。

「ブロッくんのおかげで、私は批判の声に惑わされることなく、愛と勇気だけを胸に、日本の未来を切り開いていくことができます! 皆さん、ブロッくんを応援してください!」

 

海野大臣は高らかに宣言した。会場は拍手と歓声、そして、かすかな不安に包まれた。

その夜、海野大臣は、一人執務室でブロッくんと向かい合っていた。「ブロッくん、今日もたくさんブロックしてくれたんだね。ありがとう。」

海野大臣がブロッくんを撫でると、ブロッくんは小さな手を震わせ、かすかに「ピピッ」と鳴いた。まるで、「まだまだブロックが足りない」と言っているようだった。

 

「そうだね、ブロッくん。もっともっとブロックして、愛と勇気に満ち溢れた日本を作ろうね。」

海野大臣は、ブロッくんと共に、今日も愛と勇気を求めて、SNSを続けるのだった。