2916円の鮭弁当とヒルズ族になりたい男
高級住宅街のセレブ、通称「ヒルズ族」と呼ばれる富裕層たちは、一体どんな生活を送っているのだろうか?
彼らが好んで食べる高級弁当とは一体どんなものなのか?
「麻布台ヒルズに住んでいる友人がいるんだけどさ、この前遊びに行ったら驚いたことがあったんだよ。」
バーで知り合った男が、ウイスキーのロックを傾けながら話し始めた。
「その友人が昼飯に弁当を買ってきたんだけど、それが凄かったんだよ!鮭弁当が2,916円もしたんだぜ!?」
「2,916円!?鮭弁当が!?そりゃあ確かに高いけど…高級住宅街だし、そんなもんじゃないの?」
「いやいや、違うんだよ!鮭弁当の内容がヤバいんだよ!鮭が一切れと、ご飯と、梅干しだけ!あとは謎の緑色の葉っぱがちょろっと乗ってるだけ!」
「えぇ…それはちょっと…シンプルすぎるというか…手抜きというか…。」
「だろ!?しかも、その緑色の葉っぱ、後で聞いたらパクチーだったんだよ!鮭弁当にパクチーってどういうセンスだよ!?」
「いや、それは…ないわ…。」
「しかも、友人はその弁当を「うん、まぁまぁかな。」とか言って普通に食べてたんだよ!ヒルズ族の舌は俺たちとは違うのか…?」
「いや、もしかしたら…その友人は、ただの見栄っ張りで、本当は「まずい!高すぎる!」って思ってるのかもよ?でも、ヒルズ族としてプライドがあるから、まずいなんて言えないんじゃないかな?」
「…なるほど、確かにそうかもな。ヒルズ族って大変だな…。」
男は再びウイスキーを口にした。僕もつられてビールを呷る。
「でもさ、もし俺がヒルズ族になったら、毎日高級弁当食べまくるけどね!だって、美味しいかどうかは別として、話のネタにはなるじゃん?」
「…おい、お前さっきまでヒルズ族のことdisってたのに、結局ヒルズ族になりたがってるのかよ!」
「だって…人間だもの…。」
男は照れくさそうに笑った。僕もつられて笑った。
バーの喧騒の中、僕たちはヒルズ族の謎について語り合った。そして、いつかヒルズ族になって高級弁当を食べることを夢見たのだった。
おしまい