家電量販店の帝王降臨!店員トシさんと冷凍庫フリーザの攻防
「いらっしゃいませ。最新家電をお探しですか?」
家電量販店の冷蔵庫コーナー。店員の**トシさん**は、テカテカのネクタイを締め、獲物を狙うスカウターのような眼光で客を待っていた。そこへ、腰の曲がった、しかしどこか威圧感のある老婆、**ウメさん**が現れる。
「あんた、最近の冷蔵庫は『宇宙の帝王』が冷やしてくれるって聞いたんだけど、本当かい?」
トシさんの目がキランと光った。
「お目が高い!こちら、東芝の新型冷凍冷蔵庫**『FREEZA(フリーザ)』**でございます。野菜室特化の『ベジータ』に続く、冷凍機能の頂点に立つ一台ですよ!」
ウメさんは、純白の冷蔵庫をじろじろと眺める。
「ふん。見た目は普通じゃないか。第何形態だい、これは?」
「こちらは最終形態……あ、いえ、最新モデルです。庫内温度を極限まで下げ、食材の鮮度をデスビームのごとく一瞬で固定します」
「……で、おいくらなんだい?」
トシさんは、わざとらしく顎を引いて不敵に微笑んだ。
**「私の希望小売価格は、53万です」**
「高いよ!!」
ウメさんの鋭いツッコミが飛ぶ。
「たかが箱に53万も出せるか! 」
「滅相もございません。ですが、この冷蔵庫は故障するたびに性能が遥かに増す……その修理をあと2回も残しているのです。この意味が分かりますか?」
「**ただの欠陥品だろ!!** さっさとリコールしなさいよ!」
トシさんは動じない。
「さらに、音声機能も搭載しております。扉を長く開けっ放しにすると……」
冷蔵庫から、やけに上品で冷徹な声が響いた。
***『……扉を閉めなさい。さもなくば、中身を木っ端微塵にしますよ?』***
「脅された!? 今、私、冷蔵庫に消されるって脅されたわよね!?」
「いえいえ、これは『徹底した温度管理』のメタファーです。ちなみに製氷皿の水が切れると、**『キェェェェェェェェイ!!!!』**という咆哮とともに給水を促します」
「近所迷惑だわ! 喉が渇いただけで叫ぶ帝王なんて嫌よ!」
ウメさんは呆れ果てて踵を返そうとしたが、ふと隣にある緑色の冷蔵庫に目を留めた。
「こっちは何だい? 『CELL(セル)』って書いてあるけど」
「ああ、それは他社の試作機です。あらゆる食材の細胞(セル)を壊さず保存する究極体ですが……**時々、勝手に卵を産み落とす不具合**がありまして」
「それ、もう冷蔵庫じゃなくてクリーチャーじゃない!!」
結局、ウメさんは「三菱にするわ」と吐き捨てて去っていった。
トシさんは一人、静かにスカウターを指で弾く。
「……ふん。戦闘力(購買意欲)の低いゴミめ」
その翌日。東芝から**エアコン「クウラ」**の発売が発表され、SNSでは再び「もうやめろ」の嵐に包まれたという。
