喫茶「毒キノコ」の常連客、ボブの伝説

喫茶「毒キノコ」の薄暗い店内。マスターのジェイドは、カウンター越しに常連客のボブに話しかけた。

「ボブさん、今日はいつもと違うコーヒー豆を使っているのですが、お気づきになりましたか?」

ジェイドはニヤリと笑う。ボブは恐る恐るコーヒーを一口啜った。

「う、うむ… いつもより苦味が強いような… いや、苦味の中にほのかな甘みを感じる… これはもしや… 幻の…!」

ジェイドは期待に満ちた目でボブを見つめる。

「…インスタントコーヒーですか?」

ジェイドの期待は脆くも崩れ落ちた。

「違いますよ!幻のブルーマウンテンNo.1です!インスタントコーヒーなんて、この店で出すわけないでしょう!」

「そうですよね… でも、この香ばしい香りは… どこかで嗅いだことがあるような… もしかして…」

ボブは再びコーヒーを一口啜る。

「…カップヌードルのシーフード味ですか?」

ジェイドはカウンターに突っ伏した。

「ボブさん… あなたは一体、私のコーヒーを何だと思っているんですか?」

「すみません… でも、本当にそんな味がするんです…」

ボブは申し訳なさそうに言った。ジェイドはため息をついた。

「もう、いいです… 今日は特別に、新しいコーヒー豆を使ったケーキをサービスします…」

ジェイドは奥の厨房へ消えていった。しばらくして、ジェイドはケーキを持って戻ってきた。

「どうぞ、ボブさん。これは私の自信作です。」

ボブはケーキを一口食べた。

「う、うむ… これは… もしや… 幻の…!」

ジェイドは期待に満ちた目でボブを見つめる。

「…麩菓子ですか?」

ジェイドは力なくカウンターに倒れ込んだ。

「ボブさん… あなたは本当に… 私の味覚の敵です…」

ボブはキョトンとした顔で、残りのケーキを美味しそうに頬張っていた。

「あ、でも、美味しいです。」

ジェイドは天井を見つめた。

「…ありがとうございます…」

薄暗い喫茶店には、今日も静かにジャズが流れていた。