無人駅の「プロ市民レーサー」:カズヤの権利主張の結末

「本日も、我が**『無人駅・限界突破チャレンジ』**へようこそ。私は当チャンネルの主役、車いすの貴公子こと、ゴッド・スピード・カズヤだ」

古びた駅のホームで、カズヤは自撮り棒を構えて吠えた。傍らには、彼の親友であり唯一のツッコミ役、自称・敏腕プロデューサーのサトシが、死んだ魚のような目で立っている。

「……カズヤ、いい加減にしろ。ここは一日の乗降客数が3人っていう伝説の無人駅だぞ。駅員どころか、さっきから**野良猫一匹通ってねえよ**」

「甘いなサトシ! 私はこの『駅員不在』という絶望的状況に真っ向から異を唱える。憲法が保障する『移動の自由』、それはつまり、**『私が思い立った瞬間に、誰かがお姫様抱っこで電車に乗せてくれる権利』**のことだ!」

「お前の憲法、解釈がバグりすぎてて怖いわ。そんなの『移動の自由』じゃなくて『介護の強要』だろ。大分地裁の判決文を百回音読してこい」

カズヤはサトシの正論を無視し、無人改札に向かって叫び始めた。

「誰かー! 介助が必要な市民がここにいますよー! 今すぐ有人駅からタクシーを飛ばして助けに来なさーい! **ついでに冷えたコーラも持ってきてー!**」

「駅員をデリバリーの店員か何かだと思ってんのか。大体な、予約すれば介助に来てくれるってルールがあるだろ。それを無視して突撃しといて『差別だ!』は、もはや**ただの当たり屋**なんだよ」

「サトシ、君は分かっていない。私の目的は移動することではない。**『鉄道会社を困らせること』**……あ、間違えた、**『権利を主張すること』**にあるんだ!」

「今、本音がダダ漏れたぞ。お前、『プロ市民レーサー』ってあだ名つけられてる自覚あるか?」

カズヤは鼻を鳴らし、今度はホームと電車のわずかな隙間を指差した。

「見てくれ! この隙間だ。これが私の心を切り裂く断絶の溝。ここに駅員がスロープを敷かないのは、私に対する**宣戦布告**と受け取っていいんだな!?」

「いや、自分で板持ってこいよ。もしくは、そのハイテク電動車いすでジャンプしろ。お前、昨日**『この車いす、段差も越えられて最高だぜ!』**って自慢してたじゃねえか」

「それはそれ、これはこれだ。情けは人のためならず、という言葉を知っているか? 私を助けることは、巡り巡って駅員の徳を高めることになるんだ」

するとその時、駅のスピーカーから機械的な音声が流れた。
『……防犯カメラで確認しております。お客様、危ないですから黄色い線の内側にお下がりください。なお、コーラの配達は承っておりません』

「なっ、防犯カメラだと!? 監視されているのか! 私の人権が、**デジタルな眼差しによって侵害されている!**」

侵害じゃなくて、お前の奇行が記録されてるだけだよ!